『頭は一つずつ配給されている』森崎東著

《渥美清の名セリフを冠したエッセイ集。自作の話から世間の動きまで、蠢く思考を綴る。
16歳のころ、何かに属して楽になりたいと思いながら、結局すべての「収まりきったもの」に敵意を向け、境界線上をふらついていた。そんなとき観た映画が森崎東監督の「生きてるうちが花なのよ死んだらそれまでよ党宣言」だった。登場人物たちの居場所のなさと切実さ、はかないようでゆるぎない交わりと愛情。「結末が最悪だとしても、このまま走れ!」と勇気づけられた気がした。
驚いたことに、森崎監督は近所に住んでいた。縁あって一度会った。ほの暗い廊下の奥から現れたラフな部屋着の監督は、「一度着てしまったものだけど」と言い、「生きてるうちが花なのよ」と書かれたTシャツを手渡してくれた。私は、なんとか「ありがとうございます」と言った。それだけ。そのシャツは私の宝物となったが、毎日のように着たせいで、すぐボロボロになった。
それから約20年、「生きてる……」の続編とも言える映画「ニワトリはハダシだ」が完成。私もいまだに境界線上をふらついて生きている。胸が締めつけられるような、不思議な喜びが湧いた。
秋にはロードショー、さらには全作品上映企画もある。期待しつつ、本書で反骨と疑念と愛情とが交じり合う森崎東の美文を愉しもう。》 「週刊スパ」2004年9月14日号

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