coffee3-1

第2話 『香りを楽しみながら』

コーヒーのほのかな香りを楽しみながら、ゆったりとした時の流れのなかで好きな作家の小説を読む。自分が豊かになったように思えるのは、とてもうれしいことです。
最近になってから、池澤夏樹さんの『真昼のプリニウス』と『スティル・ライフ』(ともに「中公文庫」)を読んだ。透明な気分になれます。おいしいピュアなコーヒーの味です。

coffee3-1 池澤さんの著作と出合うキッカケとなったのは、タイトルに惹かれた『新世紀へようこそ』(光文社)でした。ニューヨーク2001年9月11日の直後からのメールマガジンを、ペーパーに置き換えたものです。

多くの人々があの日の前と後の世界を、自身のなかで明確に区別して考えているものと思いますが、交通整理の役目を果してくれる1冊です。感謝しています。
この本には続編があり『世界のために涙せよ』(光文社)と題されています。これも刺激的です。
9月11日以後、世界の様相が変化したことでもっとも重大な点は、ダブルスタンダードが公然とまかり通って、それがこの国の「国際貢献」の口実に使われ始めたことではないでしょうか。口触りの好い理由をつけての海外派兵は、半世紀以上かけてこの国が曲がりなりにも醸成した国のあり方を、根底的に失わせることになります。二者択一という近視眼に対応するには、未来への展望と歴史を見つめる眼差しを誰もが持つことなのだろうと感じています。

本日のコーヒーは「スマトラ・マンデリン」。
音楽は「イマジン」を聴きながら……。